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感覚を閉じる、開く

岩手県の山深い里でマッサージのセミナーに参加した時の事。毎朝7時から宿の周辺を小一時間散歩しました。3月の岩手はまだ雪が道路の端っこや木々の陰に残っていて、頬を刺す冷たい空気が心地よく、楽しみな時間でした。

 

研修に参加していた仲間は、皆感性豊かな面々。道端の雪の間からほんの少し顔を出した春の草花に目ざとく気付き、山菜の天ぷらの話で盛り上がったり、どこからか近づいて来る渡り鳥の声に一番に気が付く仲間も。私は言われても最初は気付かず、渡り鳥が近づいてきてやっとその鳴き声が耳に入ってきました。渡り鳥の鳴き方の微妙な違いも分かっていて、鳥の種類まで分かってしまう。格好いいなぁ~、と感心すると同時に、私は普段の生活の中で随分感覚を閉じて生きているんだなぁと思ったのです。

 

私の場合、朝7時に少し離れたビルの屋上にある空調設備のファンが「ブォンッ!」と一声あげてから動きだし、一日中「ブォーーー」と途切れず鳴り続けるのを聞く生活。

 

窓を閉めると聞こえないので、初めは閉めていたけど、その内にもう音は気にならなくなって、窓を開けていても「ブォーーー」という音は気付かずに体、耳を通り過ぎて行っている。都会の喧騒を気にしていると生活出来ないから、そういうものに対する感覚を閉じて、生活しているんです。満員電車に乗る時もキュッと色んな感覚を閉じている。

 

都会での生活をストレスを感じずに過ごして行く為に、無意識に閉じている感覚が結構あって、それがデフォルトになっているんだなぁと思いました。

それで多分、自然の中の小さな季節の変化や動物の出す音にも少し気付きにくい、感じにくくなっている。

 

都会で暮らしている人に限らず、生活の中でストレスから自分を守る為に、色んな感覚を閉じている事は必要な事で、私達が身に付けている防衛本能だと思います。ただ、それが本当の私の感覚、感性では無く、元々はもっと豊かに色々な事を感じる事が出来る、という事をセミナー期間中の自然豊かな山郷の散歩、マッサージセッションをする、受けるを通して肌で感じました。

 

初日は渡り鳥の姿が見えるまで気付かなかった私も、4日目には渡り鳥の鳴き声に早く気付ける様になりました。日本での越冬を終えて次の地へ移動する渡り鳥達は、なんと毎朝!私達の頭の上を通り過ぎて行ったんです。

 

自然の中に身を置く事は、鈍っている感性を取り戻す近道の一つだと思います。からだで感じる感覚、こころで感じる感覚、言葉では表現出来ない感覚。色々な感覚を開き、豊かにする事は、自分の本当の欲求、自分でもまだ気付いていない本当の欲求に出会う事にも繋がると感じます。

 

来年は益々色んな事を“感じる”一年にしたい。

 

感覚を大切にし、目覚めさせる癒しのオイルマッサージ/心で触れるボディワークを始め、星と海のそれぞれのセッションでも、感覚を開くお手伝いが出来ればとても嬉しいなぁと、今年が終わりに近づいている、という時の感覚を味わいながら思う、今日この頃です。